ああの、今日も夢を叶えるの巻!

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ミュージカル、映画、夢物語、タイ、歴史が好きな永遠の18歳(総合商社勤務歴あり)。

【本】勇気をもらう、「飛ぶ教室(エーリヒ・ケストナー)」

サワディーカップ!

総合商社出身の自称タイ人、ああのです!

飛ぶ教室 (新潮文庫)

3連休みなさんいかがお過ごしでしょうか。

今日も相変わらず暑いですね!

まだ気温は高いですが、来週にもなると秋っぽくなってくるのではないでしょうか。

今日は、本のおすすめ「飛ぶ教室」(エーリヒ・ケストナー作)をご紹介します。

「飛ぶ教室」は1933年にドイツにて発行されました。

当時はドイツは第二次世界大戦の直前でもあります。

時代背景についても少しかじりながらご紹介できればと思います。

目次

不思議な前書き

クリスマスの物語を書かないと母親に怒られる、というマザコンチックな前書きで始まる「飛ぶ教室」。

第一の前書は普通な印象を受けるが、第二の前書は不思議な印象。

たくさんのアドバイスが散りばめられており、少年たちに向けて書かれたとても深いものばかりだ。

あなたが大人になって読んだとしても、大切に思われることがたくさん書かれている。

時代背景

ケストナーが「飛ぶ教室」を書いた1933年は、ドイツにとっても重要な時代だ。

ヒトラー政権が誕生し、ナチ党が政党で多数の議席を得た年である。

ナチスの独裁が始まった年だ。

(ヒトラーについて以下出典:https://www.y-history.net/appendix/wh1502-082.html

1933年に首相に任命されると総選挙を布告して、2月に国会放火事件をでっちあげてドイツ共産党を非合法化し、選挙ではナチ党が288議席を占めて反対派を押さえ込み、ヒトラーに4年間の全権委任を認める全権委任法を成立させた。続いて労働組合の解散、共産主義やユダヤ人の著作の焚書、ナチ党以外の政党の禁止を立て続けに実施して独裁体制を確立させた。

ナチスはユダヤ人の迫害で大いに悪名高き存在であるが、芸術分野でもその悪名は名高い。

自由な創作活動ができなくなったためである。

ユダヤ人を妻に持つトーマス・マンを始めとする多くの作家や詩人たちがアメリカやスイスに亡命する中、ケストナーはドイツに留まった。(トマス・マンについてはWikipedia参照。)

パウル・トーマス・マン(Paul Thomas Mann、1875年6月6日 - 1955年8月12日)はドイツ小説家リューベックの富裕な商家に生まれる。当初は実科を学んだが処女小説『転落』が認められて文筆を志し、1901年に自身の一族の歴史をモデルとした長編『ブッデンブローク家の人々』で名声を得る。その後市民生活と芸術との相克をテーマにした『トーニオ・クレーガー』『ヴェニスに死す』などの芸術家小説や教養小説の傑作『魔の山』を発表し、1929年ノーベル文学賞を受賞した。

1933年ナチスが政権を握ると亡命し、スイスやアメリカ合衆国で生活しながら、聖書の一節を膨大な長編小説に仕立てた『ヨセフとその兄弟』、ゲーテに範を求めた『ワイマルのロッテ』『ファウストゥス博士』などを発表。

ケストナー自身はドイツに生まれたものとして、故郷がナチスによって侵略されていく姿をはっきりと見ておきたいとの思いだったのだろうか。

ケストナーは、ナチスの政権下であることを十分に承知した上で、「飛ぶ教室」を書いている。

内容紹介

ケストナー自身は児童文学に対する思い入れが深かった。

子供向けの文学書として「飛ぶ教室」は書かれているが、読者層である8歳から80歳のあらゆる人を対象にしている。

そのため、一般的な児童書とは一線を画している。

子供がまるで楽しく、騒ぐだけの存在として描くのではなく、彼らなりの苦労と悩みがあるという事に重点を書いている。

寄宿学校に通う子供達5人のクリスマス前後の出来事を丁寧に書いている。

一人一人の悩みと葛藤に着目し、成長していく様が読んでいて清々しい。

そして彼らを温かく見守る先生や周りの大人たち。

「飛ぶ教室」は児童文学とはいえ、大人でも十分に楽しめる作品である。

仲間や周囲の大人たちへの信頼、勇気、友情など散りばめられた美しい言葉の数々。

時代背景もあわせて読むと、なおさら楽しめる作品。

まとめ

児童文学にありがちな話かと思いきや、とにかく感動してしまった。

本を読んで感動したといえば、カズオ・イシグロ「日の名残り」以来かもしれない。

なぜ「飛ぶ教室」がナチスドイツによって禁じられたのかはまだよくわからない。

生きる勇気と、日々の生活を真摯に生きることの大切さを思い出させてくれるということは言えるだろう。

作者であるケストナーは、「飛ぶ教室」発表以降、ナチス一党独裁体制に抵抗し続けた。

自由な執筆が禁じられたため、その回避策として詩集を同じドイツ語圏であるスイスから出版するなどケストナーはその柔らかい語り口調からは想像もできない強さをもっていたようだ。

この作品も、厳しい世の中を見据えつつも、穏やかにそして温かに読者を包むような仕上がりになっている。

「飛ぶ教室」はあなたの大切な作品の一つになること間違いなし。

ぜひご一読を。

飛ぶ教室 (新潮文庫)

飛ぶ教室 (新潮文庫)

 

先ほどご紹介したカズオ・イシグロはついこの間、ノーベル賞を受賞しましたね。

彼の代表作と言ってもいい「日の名残り」もご紹介しておきます。

実はこちらも第二次世界大戦前のイギリスを舞台にしています。

イギリスのとある屋敷で働く執事の視点から描かれた淡々と、しかしそれでいて情感に溢れた作品になっています。

深い人間描写と風景描写から、じんわりと後に残る感動が読んだ後にあなたの胸に迫ることでしょう。

大変に印象的な作品で、こちらもぜひ一読をオススメしたい作品です。

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

日の名残り (ハヤカワepi文庫)

 

サワディーカップ!

ああのでした!